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調理師が転職を考え始めたとき、最初にすべき3つのこと
調理師の転職をサポートするキャリアアドバイザーによるコラムです

はじめに

「今の職場を辞めたい」と思い始めた。でも、次にどうすればいいかわからない。転職サイトに登録してみたものの、何から手をつければいいのか——そんな状態で立ち止まっている料理人の方は、少なくないと思います。

料理人の転職は、一般的な転職と少し性格が異なります。技術職であるがゆえに「次の職場で通用するか」という不安が大きく、また業界内の人間関係を気にして動き出せない方も多い。「転職したい」という気持ちと「でも......」という躊躇が、長い間同居したまま時間だけが過ぎていく——これは珍しいことではありません。

この記事では、転職を考え始めたときに最初にすべき3つのことをお伝えします。難しいことは何もありません。まず、ここから始めてみてください。

その前に:「転職したい」と思った理由を、正直に見つめる

3つのことをお伝えする前に、一つだけ確認していただきたいことがあります。

「なぜ転職したいのか」という問いに、正直に向き合えていますか。

転職を考える理由は人それぞれです。給与への不満、人間関係の疲强、技術を磨ける環境への渴望、体力的な限界、将来への漠然とした不安——どれも正当な理由です。ただし、その理由によって「転職で解決できること」と「転職しても解決しないこと」が変わってきます。

たとえば「今の料理長との関係が辛い」という理由で転職しても、次の職場でも人間関係の問題が起きる可能性はゼロではありません。一方で「もっと本格的な料理を学べる環境に行きたい」という理由であれば、転職先の選び方次第で確実に状況は変わります。

自分の「転職したい理由」を言葉にして並べてみることで、自分が本当に求めているものが見えてきます。この作業が、この後の3つのステップをより意味のあるものにしてくれます。

すべきこと1:「自分のキャリアの棚卸し」をする

転職活動を始める前に、まず自分がこれまで積み上げてきたものを整理することが大切です。

経験してきた職場と期間、担当してきたポジションと料理のジャンル、得意な仕事と苦手な仕事、これまでで一番やりがいを感じた瞬間——これらを書き出してみてください。履歴書を書くためではありません。自分自身が「自分は何者か」を把握するための作業です。

料理人の方々は、日々の仕事に集中するあまり、自分がどれだけの経験を積んできたかを過小評価していることがあります。「自分にはまだ大したキャリアがない」と思っていても、棚卸しをしてみると「これだけのことをやってきたのか」と気づく方も少なくありません。

この棚卸しは、次の職場選びの軸を作るうえでも重要です。「自分は何が得意で、何を深めたいのか」が明確になることで、求人票を見る目が変わってきます。

具体的な書き出し方

  • これまで働いた職場(施設名・業態・在籍期間)
  • 各職場で担当したポジション・業務内容
  • 身についたと思う技術・知識
  • 逆に、まだ身についていないと感じること
  • 今の職場で「これは良かった」と思えること
  • 今の職場で「これは辛かった」と思えること

すべきこと2:「次の職場に何を求めるか」を言葉にする

棚卸しが終わったら、次は「自分が転職先に何を求めているか」を整理します。

これは「条件の希望リスト」を作ることではありません。もちろん給与・休日・勤務地といった条件は大切ですが、それだけで転職先を選ぶと、入社後に「思っていた環境と違った」という経験を繰り返すことになります。

大切なのは、条件よりも「どんな環境で、どんな料理人になりたいか」を言葉にすることです。

いくつか問いかけてみます。
「技術」について:これから深めたいのはどのジャンルの料理ですか。特定のポジションを極めたいですか、それとも幅広い経験を積みたいですか。師匠と呼べるような料理長の下で学びたいですか。

「働き方」について:繁忙期と首散期のメリハリある働き方は受け入れられますか。住み込みや地方への転居は考えられますか。組織の中でキャリアを積みたいですか、それとも少人数の厨房で裁量を持って働きたいですか。

「将来」について:10年後、自分はどこに立っていたいですか。独立・開業を視野に入れていますか。組織の中でポジションを上げていくことを目指していますか。

これらの問いへの答えが、業態選び・施設選びの軸になります。ホテル・旅館・料亭・割点・本格レストランは、それぞれ異なる文化と働き方を持っています。「自分が何を求めているか」が明確なほど、自分に合う業態・施設が見えてきます。

すべきこと3:「情報を集める」——ただし、焦らずに

自分のキャリアと求めるものが整理できたら、いよいよ情報収集です。ただし、ここで一つお伝えしておきたいことがあります。

「転職活動を始める」ことと「すぐに転職する」ことは、別のことです。

情報を集め始めたからといって、すぐに今の職場を辺める必要はありません。特に料理人の転職は、タイミングが大切です。繁忙期の真っ只中に辞めることは、今の職場への迷惑になるだけでなく、自分の評判にも関わります。まずは情報収集と準備を進めながら、適切なタイミングを見極めることが重要です。

情報収集の具体的な方法:

まず、気になる施設のホームページを見てみてください。料理のコンセプト・施設の歴史・スタッフの紹介——ホームページには、求人票では伝わらない施設の文化が滲み出ています。

次に、転職に特化した求人サービスや、業界を専門とするキャリアアドバイザーに相談することも有効です。求人票に載っていない情報——実際の現場環境・料理長の人柄・給与交渉の相場感——は、業界を知る人間を通じて得られることがあります。特に給与・待遇に関することは、自分で直接聞くことに蹴躇を感じる方が多いのが実情です。そうした場面で、代わりに確認してもらえる存在がいることは、転職活動を進めるうえで大きな助けになります。

また、業界内の知人・先輩料理人に話を聞くことも、生きた情報を得るための有効な手段です。ただし、今の職場に話が漏れるリスクには注意が必要です。信頼できる人物を選んで相談するようにしてください。

転職は「逃げること」ではない

最後に、一つだけお伝えしたいことがあります。

転職を考えることに、後ろめたさを感じている方がいるとしたら、それは必要のない感情です。

料理人という仕事は、技術と経験の蓄積が命です。今の職場では学べないことが、別の職場ではあるかもしれない。今の環境では発揮できない力が、別の環境では開花するかもしれない。そのために職場を変えることは、料理人としての成長を諷めることではなく、より深く追求しようとすることです。

「料理が好き」という気持ちがある限り、その気持ちを大切にできる場所を探すことに、遠慮はいりません。

この記事で整理した3つのことを、まずは一つずつ、自分のペースで進めてみてください。